担当:松井 圭悟

日本獣医がん学会 腫瘍Ⅱ種認定医
獣医腎泌尿器学会所属




消化器疾患とは


食べたものが通過し、消化吸収されて便となって出ていくまでの経路に何かしらの異常が起きることで、目に見えてわかるような下痢からなんとなく体調が悪いなどの分かりづらいものまで様々な症状を示します。
治療も原因やその子の体質によって様々になりますので、それを見極め治療していく必要があります。



どんな症状があるの?


吐く 下痢する 食欲がない 血便が出る 元気がない 痩せていく 太れない
しぶりがある 吐物に血が混じる 便が出ない 便の色や形が変わった



検査



  1. 超音波検査

    胃腸の形や動きなどをリアルタイムで見ることができ、消化器疾患で中心となる検査です。これにより胃腸のコンディションの確認や疾患の発見に役立ちます。動物への負担も少なく、簡単に行えるもが利点ですが、正確に診断するには毛刈りをする必要があるときがございます。












  2. レントゲン検査

    胃腸や超音波では見えない食道の異常を発見するのに役立ちます。細かい構造や動きを見ることはできませんが、全体的な変化を捉えたり、異物の発見、またバリウムなどの造影検査を行うことで腸の詰まりなどを確認することができます。



  3. 糞便検査

    顕微鏡で便を観察することで、腸内寄生虫の発見や、細菌バランスの変化を見ることができます。また外注検査に出すことで、ウイルスの検出や顕微鏡での発見が難しい寄生虫、顕微鏡では判別できない細菌の種類などを特定することが可能です。



  4. 内視鏡検査

    上記の検査で診断がつかない疾患の発見や、異物の除去などを行うことができます。検査には全身麻酔が必要になりますが、繰り返す吐きや下痢、血便などの診断を行う上で非常に重要な検査になります。







  5. 血液検査

    原因特定の助けとなったり、今身体がどの程度ダメージがあるのかなど状態の把握に役立ちます。



  6. Glu

    著しい嘔吐や下痢で体が消耗すると小さな子では低血糖などの危険な状態になることがあります。また消化管の腫瘍や膵臓の疾患でも異常値を示すことがあります。



  7. Alb

    下痢や嘔吐による脱水で高くなります。また、腸炎や消化器腫瘍などの疾患で、腸からの吸収が悪くなったり、排出が増えると低くなります。重度に低くなると腹水が溜まりお腹が張ってくることがあります。



  8. BUN

    嘔吐下痢による脱水や消化管内の出血で高くなることがあります。



  9. Ca

    急性膵炎や消化管からの吸収不良などにより低くなることがあります。重度に低下すると痙攣発作などを起こすことがあります。



  10. PHOS

    消化管からの吸収が悪くなると低下します。重度に低下すると血液の成分が壊れてしまうことがあります。



  11. LIPA

    膵炎の場合に高くなることがあります。ただし膵炎以外でも高くなることがあるため解釈には注意が必要です。



  12. Spec

    より膵炎に特化した検査です。LIPA よりも膵炎を見つけやすいですが、少し費用がかかります。



  13. 電解質(Na、K、Cl)

    嘔吐や下痢などで身体の体液が失われることでバランスが崩れ、様々な症状がでます。



  14. CRP(犬)・SAA(猫)

    強い炎症があるときに上昇します。今ダメージが同程度あるかの指標になります。



  15. その他院内では測定できないものなどもありますので必要に応じて実施いたします。



  16. 消化器疾患では、例え症状が同じであっても原因により治療の方針が大きく変わることがあります。例えば特に治療の必要なものや、数日お薬を飲めば治るもの、生涯お薬が必要となるもの、外科手術が必要となるもの、薬ではなくご飯の変更や生活環境を変えることで治るものなどが見た目では同じ症状を示すことがよくあります。また一過性の下痢や吐きなどでは原因の特定できないものも多いです。そのためその子その子に応じて必要なものを見極め、適切な治療を実施する必要がございます。飼い主様や患者である動物たちにとってやらな過ぎず、やり過ぎずの検査や治療をご提供できればと日々努めておりますので、困った際にはお気軽にご相談下さい。