担当:岩永 孝治
獣医師/医学博士/日本獣医循環器学会認定医
近年獣医療の進歩、飼い主様の意識の向上などによりペットの平均寿命が伸び高齢化が進んでおります。
それに伴い心臓疾患、腫瘍疾患、泌尿器疾患はどんどん多くなってきました。心臓病は重度になってから発見されることが多く、また命を脅かす怖い病気です。
現在死亡原因として心臓病は犬では2番目、猫では4番目に多い疾患と言われています。
できるだけ長生きをして飼い主様と共に健やかな生活をおくためには早期発見、早期治療、定期的な健康診断が重要です。
こんな症状はありませんか?
- 最近なんだか元気がない
- 咳をするようになった(とくに夜中や明け方、運動時や興奮しているとき)
- 散歩に行きたがらなくなった
- 散歩中にハアハアして疲れやすくなった
- 失神するようになった
- 舌が紫色のことがある
- おなかが膨れている
上記に項目に該当するものが一つでもあったら心臓病にかかっている可能性があります。
早期発見のために早めの健康診断をおすすめいたします。
心臓病と検査
一言に心臓病といってもたくさんの病気があります。
動脈管開存症や心房中隔欠損といった先天性疾患、弁の締まりが悪くなってしまう弁膜症、心臓の筋肉の動きがわるくなってしまう心筋症、ほかにも心臓内に虫が寄生してしまうフィラリア症、まれではありますが心臓に腫瘍ができてしまうこともあります。
それぞれ治療法が異なりますのでどのような心臓病なのかしっかりと確定診断することが大事です。
もちろん聴診だけでも雑音があったり不整脈があったりとわかることはあります。
ただ雑音を生じない病気もありますし、単純に雑音の強度が病気の進行度をあらわさない場合もあります。
聴診だけしてただ漠然と心臓の薬を飲ませるのは雑な治療だと思います。
そのような雑な医療をなくすために、しっかりとした診断、治療プランを考えるためには画像診断(エコー検査、レントゲン検査)が必要です。
犬の心臓病
犬の心臓病の中で一番多いのが僧帽弁閉鎖不全症です。
心臓の部屋を隔てる弁がきちんと閉まらなくなり血液がうまく流れなくなってしまう病気です。
中年齢以上の小型犬におおく、チワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャ・テリア、キャバリア・チャールズ・スパニエルなどの犬種で特に見られます。
咳や失神といった症状がでたときは症状がかなり進行しています。また全身の些細な変化によって薬の量を調整する繊細な治療が必要です。
そのために当院では心臓の内部までわかるエコー検査を積極的に行っております。
猫の心臓病
猫の心臓病の中で一番多いのが心筋症です。
心筋症は文字の通り心臓の筋肉の疾患を意味し、その中でも肥大型心筋症、拘束型心筋症といったように病態生理学的に分類されています。
呼吸困難、頻呼吸、元気消失、食欲不振、急性後肢麻痺といった症状が一般的です。
また僧帽弁収縮期前方運動(SAM)といった病態もあります。
異常な乳頭筋の位置やその他原因不明の要因により、心臓が血液を全身にうまく送り出せなくなってしまう病態です。
当院では犬より検査や診断が難しいといわれる猫の心臓病に対しても積極的に向き合っております。
心疾患専門外来
当院では通常外来のほかに心疾患専門外来を設けております。
心雑音が聴取されるがまだ診断がついていない場合や、現在の治療の効果判定などを専門的な知識に基づき診断させていただきます。
心疾患専門外来は完全予約制となっております。
事前にお電話またはFAXにてご予約ください。