担当:川合 智行

横浜市内動物病院に勤務しながら東京医科歯科大学にて人工靭帯の研究にて博士号取得(学術博士)。 その後、上田と共に横浜山手犬猫医療センターを開院。整形外科、軟部外科、内視鏡外科を担当。常に最新の手術方法の習得を心懸ける。




生殖器


不妊手術
精巣摘出(潜在精巣含む)・子宮卵巣摘出


帝王切開
その他、生殖器に関連する疾患の外科処置
乳腺腫瘍・子宮蓄膿症・子宮腫瘍・精巣腫瘍・会陰ヘルニア・肛門周囲腺腫



消化器


胃・腸切開(消化管内異物、腸捻転)
幽門狭窄
胃拡張胃捻転
脾臓摘出
肝葉切除
胆嚢摘出(胆嚢粘液嚢腫)



腎・泌尿器


腎臓摘出
膀胱切開 (膀胱内結石)
会陰尿道瘻



皮膚


体表腫瘤切除
各種外傷に対する外科処置



循環器


PDA




チェリーアイ



呼吸器疾患


胚葉捻転




不妊手術


当院では、雌雄関わらず約6カ月齢での不妊手術(雄:精巣摘出術 雌:卵巣子宮摘出術)を推奨しています。生殖器由来のホルモンが原因となる疾患を予防出来ることが、最大のメリットです。
それらの疾患は時に、動物の命を脅かすこともあり、不妊手術で予防することがとても重要です。





  1. 予防可能な主な疾患

    ・乳腺腫瘍 ・子宮蓄膿症 ・卵巣子宮腫瘍 ・精巣腫瘍 ・前立腺肥大 ・会陰ヘルニア ・肛門周囲腺腫

    また、動物の攻撃行動、マーキング、マウンティングといった、性ホルモンに由来する問題行動の改善も期待できます。

    当院では不妊手術の際、より安全かつ短時間で行うため、ベッセルシーリングシステムを導入しています。




  2. ベッセルシーリングシステムとは

    電気の力で組織を凝固させ、各臓器(精巣や卵巣)に流れる大血管の血流を遮断させることができる装置。この装置により
    ・縫合糸による反応性肉芽腫形成の阻止
    ・短時間で行うことによる麻酔リスクの軽減
    ・出血リスクの軽減
    これらのことが期待できます。








体表、皮下腫瘤


体表や皮下の腫瘤は身体のどんな部位でも、形成されます。
これらの腫瘤が、悪性なのか、良性なのか、どんな細胞から構成されているのか、などを見た目で判断することはできないため、針生検や切除生検による病理組織学的検査を行います。
その結果をもとに、治療方針を決定し、切除することによるメリットが大きい場合に、腫瘤を切除します。
腫瘤には、小さくても悪性度が高いものや、逆に大きいのに良性のものなど、様々な種類が存在するため、発見された場合、来院されることをお勧めします。









  1. 皮下(筋間)に形成された腫瘤





    体表に形成された腫瘤






チェリーアイ


正式名称は第三眼瞼腺脱出と言います。
犬の第三眼瞼腺は、目頭の内側に存在し、眼球の保護や涙の分泌を行っている器官です。
これが脱出し、赤く腫れあがってしまうことで、目にサクランボが付いている様に見えることから、この名がつけられました。




  1. 原因

    主な原因は第三眼瞼腺の根元の部分が遺伝的に欠損していることとされており、1歳未満で両側性に発生することが多いです。
    主な好発犬種として、コッカー・スパニエル、ビーグル、ペキニーズ、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグなどが知られています。




  2. 症状

    片側、または両側の目頭に丸く赤いものが認められ、眼を気にすることで擦ってしまい、二次的に角膜や結膜に炎症を起こしてしまいます。
    また、長期間第三眼瞼腺が露出することで、第三眼瞼の軟骨が湾曲変形することもあります。




  3. 治療

    抗生剤、抗炎症作用のある点眼や、綿棒による返納で一時的に治ることはありますが、脱出を繰り返す場合は外科的治療の対象となります。
    一般的には、第三眼瞼腺を正常な位置に戻し、縫い合わせることで治療します。






    チェリーアイの外科的整復






各臓器の切除・摘出







  1. 脾臓に形成された腫瘤










  2. 肝臓に形成された腫瘤









食道内異物


とても緊急性の高い疾患です


犬は食物を丸呑みする傾向にあるため、食道内異物の発生率が猫に比べ高く、閉塞を引き起こす代表例としてジャーキーなどの犬用おやつが挙げられます。
その他にも釣り針や骨やリンゴなどがあり、これら異物が存在することで食道の機械的閉塞、浮腫を伴う粘膜の炎症、虚血性の壊死を引き起こし、最終的には食道穿孔となります。最悪の場合、呼吸不全やショックなど命に係わる非常に危険な状態に陥ります。
チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなど、小型犬種で多くみられます。




  1. 症状

    異物誤食直後から数分以内に吐き気、吐出、唾液分泌過多、嚥下障害、嚥下時の痛み、食欲不振、呼吸困難など様々な症状を呈します。




  2. 診断

    緊急の際は、飼い主様からの稟告に加えレントゲン検査が最も迅速に行える診断ツールの一つです。
    単純レントゲン写真にて確定が出来ない場合、より確実な診断を下すためバリウムなどの造影剤を用いた検査を行います。

    ↓頸部食道に異物が認められた症例



    バリウム検査前


    バリウム検査後



    時に触診でも頸部の膨隆を触知することが可能です。




  3. 治療

    速やかに内視鏡検査を行い、異物の場所や大きさ、形状、食道壁の損傷具合を判断します。異物が頸部食道にある場合や消化困難な場合、食道内の移動が可能な形状であれば様々な鉗子を用いて内視鏡下で摘出します。
    逆に噴門部付近にある場合や、消化可能な場合、胃内に押し込むことで閉塞を解除できます。以上の方法が困難であれば、外科的に食道に切開を加えることで摘出します。
    食道壁はほかの消化管に比べ耐久性や修復能力が低いため、異物を除去した後も食道狭窄や拡張、嚥下困難など後遺症を残してしまう恐れがあり、術後のケアに注意が必要です。